ロジカルな展開かどうか知らんけど、フリーライターのオススメ漫画6選

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 はてなブックマークのPR枠に掲載された漫画情報サイトの宣伝記事から、「文系の言うロジカルとは?」という議論が巻き起こっています。

sp.comics.mecha.cc

 大なり小なり都合の良い展開がある(だからこそ面白い)漫画の世界で、「ロジカルな漫画など存在しないのでは?」と思わなくもないですが、せっかくなのでオススメの漫画を紹介します。

 なお、オススメする漫画は上記に掲載している記事にならって

  • 極めてロジカルな展開
  • リアリティの追求
  • ディテールへの強いこだわり

 を軸とします。要するにファンタジーや超能力がなく、中世から現代、予想されうる近未来までを舞台とした作品です。

1. 『王様の仕立て屋』シリーズ(大河原遁)

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 こういうオススメ記事は最初に自分の推しタイトルを持ってきたい。ということでスーツをメインにした服飾の漫画『王様の仕立て屋』シリーズです。

 『王様の仕立て屋』はイタリア・ナポリで伝説の仕立て屋と呼ばれた職人の弟子となった日本人が、今は亡き親方の腕を頼ってやってきた依頼人の問題や悩みを、スーツや靴、腕時計などの服飾で解決していく漫画です。

 「日本人はスーツのことを知らない」と書くと、はてブでは「主語が大きい」と突っ込まれるため自分のこととして説明しますが、『王様の仕立て屋』はスーツの知識がまったくないボクに「スーツとは何か?」をロジカルに教えてくれた作品でした。

 「なぜスーツには様々な色があるのか?」、「ストライプの細さ、太さには何の意味があるのか?」、「Vゾーンの効果とは?」、「シャツは海外では下着」、「ラペルのかたちが相手に伝える印象」などなど、スーツについての知識が読んでいるだけで頭に入ってきます。

 そもそも全身ユニクロの自分にとって、スーツとは「洋服の青山に行って試着して気に入ったものを買ってくる」という認識。

 しかし、一口にスーツと言っても「ある程度の決まったサイズから自分に合うように各部を変更するパターンオーダー」、「生地を選んで一番近い寸法を選んで仕立てるイージーオーダー」、「いちから仕立てるフルオーダー」といった仕立ての違いから始まり、生地やデザインの選択にも意味があることをこの作品で知りました。俺の知らない世界がココにある!!

 主人公の織部悠はそのなかで一番手間のかかるフルオーダーの手縫いスーツを、わずか1週間前後の期間で仕立て上げるスゴ腕の持ち主。彼はその仕事の速さから「特急料」という法外な手数料を取っており、顧客の事情に同情してもそこをまけることはないこだわりも好きなポイントです。

 シリーズのため『王様の仕立て屋~サルト・フィニート~(完結)』、『王様の仕立て屋~サルトリア・ナポレターナ~(完結)』、『王様の仕立て屋~フィオリ・ディ・ジラソーレ~(連載中)』と三部作あります。

王様の仕立て屋?フィオリ・ディ・ジラソーレ? 1 (ヤングジャンプコミックスDIGITAL)

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 物語や登場人物がつながっているため、第一作目から読むのがオススメ。あと出てくる女の子がみんな可愛いのもオススメ。

2.乙嫁語り(森薫)

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 「リアリティの追求」、「ディティールへの強いこだわり」と聞いて最初に思い浮かんだのはこの漫画です。

 1856年から1864年ごろの中央アジアの人々の暮らしを、「美しいお嫁さん」という意味を持つ「乙嫁」をテーマに描いた作品。特徴的なのはその書き込みの量。

 これ作るのにどれだけ時間かけてるの? というか原稿料では絶対にペイしてないのでは? というくらい文様や刺繍などがこれでもかと表現されています。つまるところ好きな人しかできないやつ。

 作品は街に住む12歳の少年カルルクのもとに、遊牧民出身の20歳の花嫁アミルが嫁いできたところから始まる狩りあり戦いあり刺繍ありのほのぼの(?)ラブストーリー。

 お嫁さんがテーマのため、上述のカップルを中心に別の花嫁や組み合わせが多数登場します。しかし、恋愛モノというよりは当時の中央アジアで人々がどう暮らしていたのか、どんな文化があったのかを知ることができる知識系です。

乙嫁語り 1巻 (BEAM COMIX)

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乙嫁語り コミック 1-10巻セット

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 とりあえず出てくる女の子はみんな可愛い。

3.フラジャイル 病理医岸京一郎の所見(草水敏,恵三朗)

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 みなさん、病理医って知ってますか? ボクは知りません。 『フラジャイル 病理医岸京一郎の所見』はそんな知られざる病理医の世界を描いた作品です。

 新人医師の宮崎智尋(みやざきちひろ)が、上司の治療方針に納得がいかずに病理医の岸京一郎(きしけいいちろう)の元を訪ねたところから始まる物語。宮崎先生はそこから病理医への道を進み始めます。

 と言っても主人公となるのは岸先生の方。強烈なキャラクターと病原をつきとめてあとに担当医に治療方針を変更させる詰め方はまさにロジカル。

 そしてドクター系の漫画だからといって患者がつねに治るご都合主義な展開ではなく、病気をきっかけにした人間の生き方、考え方を中心に描かれているところがボクは好きです。

フラジャイル 病理医岸京一郎の所見(1) (アフタヌーンコミックス)

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4.ラーメン発見伝(河合単,久部緑郎)

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 「ヤツらはラーメンを食ってるんじゃない。情報を食ってるんだ」、「いいか、『金を払う』とは仕事に責任を負わせること、『金を貰う』とは仕事に責任を負うことだ。金の介在しない仕事は絶対に無責任なものになる(『らーめん才遊記』より)」などの数々の名言を残したハゲ芹沢さんが登場するのがこちらの作品。

 『ラーメン発見伝』は商社に勤めるダメ社員の主人公の藤本浩平(ふじもとこうへい)が、じつはサラリーマンを足掛けに自分のラーメン屋を開こうと頑張る脱サラ系漫画。

 「うまいラーメンとは何か?」から始まり、プロのラーメンとアマチュアのラーメンの違い、客が求めているものの探し方など、最終的に藤本は「自分が本当に作りたいラーメン」を求めて修行の日々を続けます。

 ここでの修行とは皿洗いではなく、有名なラーメン屋を経営する店長たちとのラーメン勝負。と言っても味だけではなく、売上などラーメン屋としてのトータルで勝負されるところがロジカル。たぶん。知らんけど。

 読んだあとは無性にラーメンが食べたくなりますし、ハゲ芹沢さんって最高だなって気持ちになれます。

ラーメン発見伝(1) (ビッグコミックス)

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ラーメン発見伝 コミック 全26巻完結セット (ビッグコミックス)

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5.応天の門(灰原薬)

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 青年期の菅原道真(すがわらのみちざね)が主人公という一風変わった作品。物語は平安京で起きた怪奇事件を、道真がその知恵で解決していく推理モノ。

 「怪奇ってファンタジーでは?」との突っ込みは少し待って欲しい。事件は当初怪奇扱いされているものの、証拠を結びつけていくうちに「人間の仕業」だと分かるロジカル作品です。ここまでに何回ロジカルって言った?

 時代が平安時代(862年くらい)ということもあり、藤原氏による貴族政治なども描写されます。そして、彼らも怪奇事件のように見せかけた工作を行うというわけです。まあ道真が全部解決してくれるんですけど。

応天の門 1巻 (バンチコミックス)

応天の門 1巻 (バンチコミックス)

6.機動戦士ガンダムMSV-R ジョニー・ライデンの帰還(ArkPerformance)

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 ゴップがロジカルで好きになる作品です。

 後半になるにつれだんだんと紹介に疲れてきたわけですが、ガンダムです。そうガンダム。ありうるガンダムのひとつの世界というリアリティ。ディテールへの強いこだわりもある。だからファンタジーじゃありません、はい。

 『機動戦士ガンダムMSV-R ジョニー・ライデンの帰還』は、主人公がまわりの登場人物から「お前ア・バオア・クー防衛戦で行方不明になったジョニー・ライデンだろ?」と疑われまくるなかで、「自分は何者なのか?」を探していくストーリー。

 もちろん主人公には自分の幼い頃や母親の記憶さえあり、「ジョニー・ライデンなわけないじゃん」と思っているのですが、ジョニー・ライデンの痕跡や知り合いとめぐりあい宇宙するたびに「もしかしたらジョニーなのかも?」との印象を読者に与えてきます。ガンダムの世界だし記憶がいじられててもおかしくない。

 まあこの作品の見どころはなんと言ってもゴップ。前線に出ることなく司令部に引きこもり続けた「ジャブローのモグラ」と呼ばれ、ゲーム『ギレンの野望』では最低ステータスの無能な上官なゴップですが、この作品では「さすがゴップ大将だぜ」という気持ちになります。

機動戦士ガンダム MSV-R ジョニー・ライデンの帰還(1) (角川コミックス・エース)

機動戦士ガンダム MSV-R ジョニー・ライデンの帰還(1) (角川コミックス・エース)

まとめ

 以上6点、ロジカルかどうか知らんけどオススメの漫画を紹介しました。全部買え。