海外のスラム街で子供に夢を与えようとした学生、日本のネットの厳しさに耐えきれずクラウドファンディング中止へ

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 7月1日、近畿大学建築学部の学生3名が「スラム街の暮らしを肌で感じたい!」と、クラウドファンディングサービス『CAMPFIRE(キャンプファイヤー)』でフィリピンへの渡航費の募集を開始。「他人の金でスラム街見学」に対して徐々に批判が集まり、7月3日に炎上状態となりました。

 

 

炎上までの流れ

 7月1日、近畿大学建築学部の学生3名が「スラム街の暮らしを肌で感じたい!」と『CAMPFIRE』でクラウドファンディングの募集を開始。

 スラム街の暮らしを肌で感じたい! – CAMPFIRE(キャンプファイヤー)(現在は削除済み/ウェブ魚拓

 内容が「スラム街に見学に行き、現地の子供たちと話すことで夢を与える」という共感を得にくいものであったため、批判が集まります。

 7月3日にはかなり拡散し、炎上状態となりました。


どうすれば炎上を防げたか?

 このクラウドファンディングはタイトルの選択を間違えています。

 「スラム街の暮らしを肌で感じたい!」は個人的な欲求であり、共感を呼んで応援して貰うためのタイトルではありません。そのため、「他人の金でスラム街を旅行したいのか!」と批判を呼んでしまいました。

 タイトル下の写真のキャプションにあった、「スラム街の子供達に夢を与えたい!」という「子供たちのためにやる」との趣旨をタイトルにもってくるべきです。最初の一言が「旅行したい」と「現地で子供の助けになりたい」とでは反応が大きく変わってきます。

 また、本当にスラム街の子供たちに夢を与えようとしていたのであれば、炎上することはなかったでしょう。クラウドファンディングのページに掲載されていた文章を読むかぎり、「他人の金で旅行に行きたい」のにその理由を「子供たちに夢を与えるため」と言ってごまかそうとしたのが一番の原因です。

 素直に「貧しいところを見に行きたいけど、お金がないので援助してください」であればここまで燃えることはなかったと思います。

スラム街文章の何がダメだったのか?

 「こんだけ腹立つ文章」との感想があるように、今回のクラウドファンディングの募集文面にはつたない箇所がいくつもありました。

 気になったところを抜粋して取り上げます。

ただ、根性・やる気・おもしろさは他の人に負けない自信があります!

 根性とやる気があるのに他人に頼ろうとし、文章からは面白さがまったく伝わってきません。

 根拠の見えないアピールをされても共感できません。

建築という分野で、例えばゴミの山の中で暮らしている環境が本当にあるのであれば、なぜそこにゴミ集積場を作って火力発電をしないのか。そこにある課題はいったい?ということも勉強できれば将来のビジョンの一部にも組み込むことができるかもしれない。

 せめて調べて欲しいです。

 「調べた結果、○○だった。でも、△△という部分がわからない。だから現地で調べさせてください」なら「協力しよう」と思う人も出てきます。

 この文章では「何も調べてないけど現地に行けばなんかわかるやろ」くらいにしか受け取れません。

 いまできることをやってない人間に協力する人はいません。

今回の目的の1つでもある夢や目標をしっかり持つことに繋げることもできると思います。本当にそんな簡単に答えが見つかるとは思っていませんが、経験することに価値があると思います。

 これは自分のお金でやるべきことであり、クラウドファンディングの募集文面に書くことではありません。

 正直であればすべて良いというわけではないんです。

でも、実際に行ってみないと何で募金をしているのか、ゴミの山の中で暮らしている人はいるのだろうか、本当に危険なのか、一切わかりません!!

 海外の文献やルポを調べてください。

 日本語の書籍もあります。

スラム 世界のスラム街探訪

スラム 世界のスラム街探訪

 
絶対貧困―世界リアル貧困学講義 (新潮文庫)

絶対貧困―世界リアル貧困学講義 (新潮文庫)

 

なので!今年の夏休みに約1週間フィリピンのマニラに行ってきます!!

 「行ってきます」ではなく「行かせてください」。

今回の旅でやりたいことが二つあります。それは、スラム街の子供達と会話をしたり遊びで交流し、子供たちに夢を与えることです!

 前半では「学び」を強調していたのに、いきなりやりたいことが変わっています。

 取ってつけたような理由に受け取れるため、「学びたい」のか「スラム街の子供に夢をあたえたい」のかどちらかにした方が良いです。

 もしも後者であるなら、そもそも前半の説明が大きく違っていたでしょう。

 そのちぐはぐさが「スラム街の子供に夢をあたえたい」の言葉をかなり薄く感じさせます。

子供達は、外部の人との交流が少なく遊びも限られ毎日単調な日々を過ごしています。

 上記で「スラム街のことは現地に行かないとわからない」と言っているのに、なぜ「子供たちは毎日単調な日々を過ごしている」と言い切れるのでしょうか。

 すべての文章において自分たちで調べたことが書かれておらず、聞いた話や想像による話しかされていないように受け取れるため共感を呼びません。

僕たちがスラム街の子供達に夢を与えるきっかけになりたい!と思いました。そのため、子供達に日本語や日本の遊びを教えたり、フィリピンの遊びを一緒に行うなどでスラム街の子供達に生きる楽しさと将来への希望を与えたいです!!

 とても傲慢な考え方です。

 スラム街だろうがどこだろうが、子供たちは自分たちの夢を持っています。

 「違う未来があることを教えたい」のでしょうが、スラム街の子供たちが現地で会う海外のツーリストを見ていないわけでがありません。

 また、日本語よりも英語の方が普通に考えて役立ちます。

 同じ夢を与えるならこちらに支援したいです。

japangiving.jp

その活動を映像にし皆さんに届けることです!今は、映像製作もろくにできません。ですが、今回の企画をきっかけに映像作成を勉強して、すごい!!と思われるぐらいの映像を作り、今後の活動に活かしたいと思っています!

 せめて映像のサンプルくらいは欲しいです。

 「ゲームプログラマーになりたい」と面接にきた人に「じゃあ作品見せて」と言って「まだ作ってないです」と答えられたら採用するでしょうか。そういう問題です。

 お金がなくてもiPhoneならiMovie、PCならAviUtlなど、無料(少額)の映像作成ツールはたくさんあります。

みんなに世界の現状を伝え、フィリピンの子供達に夢を与えるんだ!!!!

 「学び」がどこかに消えてしまっています。

この企画を諦めるわけにはいきません!
(中略)
今回の旅行は、誰かのためではなく僕らがやりたいからやります!

 これまでの文章で読んだ人を共感させられていないため、「自分のお金でお願いします」という気持ちになります。

資金の使い道は?
3人の旅です。
航空費5万×3人=150,000円
陸移動費2万×3人=60,000円
雑費=40,000円

 計算が適当すぎます。航空費はきっちり出せるはずです。陸移動費もこんなにはかかりません。ホテル代なども入っているのではないでしょうか?

 入っていることは問題ないのですが、それならそれで明記した方が「きちんと考えている」ことを伝えられます。

炎上の結果起きたこと

 クラウドファンディングが中止されました。

 学生AのTwitterアカウントが非公開状態となりました。

クラウドファンディングは中止しない方が良かった

 炎上の結果、クラウドファンディングは本人の判断で中止されましたがしない方が良かったです。

 なぜなら筆者が最後に確認した時点では、15万円ほどの支援が行われていたからです。

 残り10万円、これまでに支援してくれた人たちのこと、そして炎上により注目を浴びたことを考えるともう少し批判に耐えれば目標は達成できたことでしょう。

 炎上すると多くの人に批判されることから心がくじけてしまいますが、「それでも応援してくれている人がいる」ことを忘れてはいけません。批判してくる人ではなく、応援してくれる人の方を見るべきです。

 とは言え、防げる炎上の対処をしなくて良いわけではないんですが……。

嫌われる勇気―――自己啓発の源流「アドラー」の教え

嫌われる勇気―――自己啓発の源流「アドラー」の教え